F1は前から興味があるんだけどルールがそもそも分からない.....そんな貴方のために。
本記事では、F1初心者の方必見!F1のルールや用語について徹底解説いたします。
そもそもF1は何の略称なのか?
結論
F1はFormula One(フォーミュラ1)の略称です!
F1は、モータースポーツのカテゴリの1つであり、その世界選手権を指す場合もあります。
世界中を1年かけて転戦するは、規模、格式から言って世界最高峰のレースです。現在、FIA(国際自動車連盟)の世界選手権の名を冠するレースはただひとつ、このF1のみ。
フォーミュラカー (Formula car) は、「車輪とドライバーが剥き出しになっている」という規格に沿ったレーシングカーです。フォーミュラカーで行われる自動車競技がフォーミュラレースで、F1がその最高峰のレースになっています。
F1グランプリ2020の年間イベントスケジュール
まずは、F1グランプリ2020の年間イベントスケジュールはどのようになっているのか?年間合計20越えのグランプリ開催が予定されています。
2020年から、ベトナムGPとオランダGPが新しく開催することが決定されています!
追記:2020年のF1グランプリは、COVID-19感染拡大のため、オーストラリアGPとモナコGPが中止となるなど、大幅なスケジュール変更があります。新しい日程が発表され次第、改めて掲載いたします。(2020年3月21日)
追記:現在開催が予定されているのは以下のレースです。
Rd. | グランプリ | サーキット | 都市 | 決勝日 |
---|---|---|---|---|
1 | オーストリアGP | レッドブル・リンク | シュピールベルク | 7月5日 |
2 | シュタイアーマルクGP | 7月12日 | ||
3 | ハンガリーGP | ハンガロリンク | ブダペスト | 7月19日 |
4 | イギリスGP | シルバーストン・サーキット | ノーサンプトンシャー | 8月2日 |
5 | 70周年記念GP | 8月9日 | ||
6 | スペインGP | カタロニア・サーキット | バルセロナ | 8月16日 |
7 | ベルギーGP | スパ・フランコルシャン | スパ | 8月30日 |
8 | イタリアGP | モンツァ・サーキット | モンツァ | 9月6日 |
9 | トスカーナGP | ムジェロ・サーキット | スカルペリーア・エ・サン・ピエロ | 9月13日 |
10 | ロシアGP | ソチ・オートドローム | ソチ | 9月27日 |
11 | アイフェルGP | ニュルブルクリンク | ニュルブルク | 10月11日 |
12 | ポルトガルGP | ポルティマオ・サーキット | ポルティマオ | 10月25日 |
13 | エミリア・ロマーニャGP | イモラ・サーキット | イモラ | 11月1日 |
追記:F1グランプリ2020は大幅なスケジュール変更が強いられることとなり、日本GPなどが中止と発表されました。新しい情報が入り次第、随時更新いたします。
なお、開催予定である13戦は、いずれもDAZNで配信予定です!(2020年8月7日)
F1の走行ルールやグランプリ概要の解説
F1のレース会場を何周回るのか?
結論


2019年のF1レース距離
グランプリ | レース距離 |
第1戦 オーストラリアGP | 5.303km × 58周 = 307.574km |
第2戦 バーレーンGP | 5.412km × 57周 = 308.238km |
第3戦 中国GP | 5.451km × 56周 = 305.066km |
第4戦 アゼルバイジャンGP | 6.003km × 51周 = 306.049km |
第5戦 スペインGP | 4.655km × 66周 = 307.104km |
第6戦 モナコGP | 3.337km × 78周 = 260.286km |
第7戦 カナダGP | 4.361km × 70周 = 305.270km |
第8戦 フランスGP | 5.861km × 53周 =309.626km |
第9戦 オーストリアGP | 4.318km × 71周 = 306.452km |
第10戦 イギリスGP | 5.891km × 52周 = 306.198km |
第11戦 ドイツGP | 4.574km × 67周 = 306.458km |
第12戦 ハンガリーGP | 4.381km × 70周 = 306.630km |
第13戦 ベルギーGP | 7.004km × 44周 = 308.052km |
第14戦 イタリアGP | 5.793km × 53周 = 306.720km |
第15戦 シンガポールGP | 5.065km × 61周 = 308.828km |
第16戦 ロシアGP | 5.848km ×53周 = 309.745km |
第17戦 日本GP | 5.807km × 53周 = 307.471km |
第18戦 メキシコGP | 4.304km × 71周 = 305.354km |
第19戦 アメリカGP | 5.513km × 56周 = 308.405km |
第20戦 ブラジルGP | 4.309km × 71周 = 305.909km |
第21戦 アブダビGP | 5.554km × 55周 = 305.355km |
F1各グランプリ大会の獲得ポイント
FIA(国際自動車連盟)が定めた競技規則(SPORTING REGULATIONS )に定められており、各大会の1位〜10位までにポイントが与えられます。
このポイントを、年間を通して最も多く獲ったチームやドライバーがその年度のチャンピオンです。
順位 | 獲得ポイント |
1位 | 25pt |
2位 | 18pt |
3位 | 15pt |
4位 | 12pt |
5位 | 10pt |
6位 | 8pt |
7位 | 6pt |
8位 | 4pt |
9位 | 2pt |
10位 | 1pt |
上記のポイント配分に加え、レースで最速ラップを達成したドライバーに1ポイント、また当該ドライバ ーが運転した車両のコンストラクターに1ポイントが授与されます。
その周回タイムが罰則を受けること なく達成され、ドライバーが最終のレース順位認定で上位10位以内にいることが条件です。最速ラップが上位10位以内に入っていないドライバーによって達成された場合にはポイントは授与されません。
F1フリー走行とは?
金曜(モナコグランプリのみ木曜)に午前・午後の2回、土曜午前に1回、計3回の練習走行が設けられています。
このことをフリー走行と言い、英語では「Free Practice」と呼ばれ、これをカタカナにした「フリープラクティス」、もしくは「プラクティス」、または略して「FP」と表記されることも多いです。
ここでの順位や計測タイムは、予選順位やレースの結果には一切影響しません。
F1の競技規則では、フリー走行での出走は強制ではないですが、3回のフリー走行のうち、少なくとも1回は走行することがレース出走の条件と記述されています。
フリー走行の1回目と2回目は必ず1時間30分、3回目は1時間とセッションの長さが決められており、1回目と2回目の間は必ず2時間30分以上空けること、3回目と予選の間は2時間以上空けることなどがおおよその規定です。
各マシンは過去のセッティングデータに基づいて開催サーキットの特性にある程度合わせて持ち込まれてはいますが、実際に走行することによってドライバーの意見を反映させて微調整を繰り返す時間でもあります。
それから、参戦初年度のドライバーが過去に走行経験のないサーキットを走る場合のコースの習熟の意味が。
近年ではマシンテストの回数を制限されているため、その代わりにフリー走行をマシンテストの場として利用したり、新しいパーツの評価を行ったりする場としても活用されています。
さらに1回目と2回目に限り、レースドライバーに代わるドライバーを起用して走らせることができるため、若手ドライバーが登場することも。日本人のドライバーが走行することもあります!
F1のフラッグの意味を解説


黄旗(イエローフラッグ)
結論
- コース上に危険があることを伝える旗で、危険度が高くなるにしたがって1本から2本へと増えます。掲示の際は、原則として振動掲示です。
FIA国際モータースポーツ競技規則には、コースでの黄旗掲示と取るべき行動について、以下のように規定されています。
「黄旗が1本振られている場合 : コース脇やコースの一部に危険箇所あり。速度を落とし、追い越しをしない。進路変更する準備をしておく。」
スピンやコースアウトなどに使われていることが多いと思います。すぐに解除されることがほとんどです。
「黄旗を2本振られている場合 : コースを完全にあるいは部分的にブロックするような危険箇所、もしくは、マーシャルがコース上で作業をしている箇所あり。速度を大幅に落とし、追い越しをしない。進路変更する、あるいは停止する準備をしておく。」
これまで見てきたレースでは、黄旗振動のまま「SC」を出してセーフティカーを進入させたり、フルコースイエローやバーチャルセーフティカーに変更して各車の速度を抑える指示に切り替わることが多いと思います。
さらに危険だと判断された場合は、赤旗(※ : 詳細は後述の#赤旗(レッドフラッグ)を参照)を出して、レースを一時停止させる指示に変更。
この危険区間がどのくらいの長さで必要なのかは、マーシャルポストの間隔や危険の大きさを競技長が考慮し、その裁量によって若干の変化が許容されています。
緑旗(グリーンフラッグ)
結論
- コース上の状況がクリアであり、走行可能であることを示す旗です。原則、振動掲示。
- 主な使用場面は、レースやセッションの開始を示すために表示と危険に対する警戒解除を示す場合です。
前者は、レース前のフォーメーションラップ終了後、緑旗が振られシグナルが点灯してレース開始です。
後者は、セッション中に何らかの理由でコース上に危険(※ : 詳細は後述の#黄旗(イエローフラッグ)を参照)があった場合などに、その危険性が解決して取り除かれた事が認められた場合や、危険に注意を要する区間が終了した際に掲示され、レース再開になります。
赤旗(レッドフラッグ)
結論
- レース、セッションを中断する必要がある場合に掲示される旗です。掲示方法は振動掲示のみ。
- 掲示された場合は、即座に減速し、追い越しは禁止です。次にピット入口に差し掛かった際にピットに帰還しなければなりません。
またFIAサーキットルールでは、決勝レース中に掲示があった場合、赤旗ラインと呼ばれる停止位置まで低速で向かわなければならないのです。
ピットやガレージエリア、赤旗ライン上では、修復作業を行う事や、ドライバーの乗降、スタッフのマシンへの接触は原則禁じられているが(以上の行為があった場合は、即リタイア)、競技長の判断や、レギュレーションによって許可される場合もあります。
赤旗が掲示される顕著な例としては、
- 非常に大きな多重クラッシュ
- 豪雨によってコース上でレースが続行不可能と認められた場合
- クラッシュによるマシン炎上
- コースを大幅に塞ぐクラッシュ
- 甚大なクラッシュによってフェンスや壁が破壊され観客に対する危険性が高まった場合
などに掲示される場合があるほか、予選中にマシンがコース上やコースサイドで止まってしまった場合など(黄旗表示で減速を求められる関係上、タイムアタックできなくなるため)。
ドライバーや監督などレースに直接携わっている関係者から、マーシャルや審判団に対して赤旗を促す例もあります。
白旗(ホワイトフラッグ)
結論
- オフィシャルカーや救急車などのレースカーと比較して低速走行する車がコースに入っている事を知らせる
- コースオフしたレースカーがコースに復帰する際の初期加速中による低速走行
- 何らかのトラブルによってスローダウンしているマシンがいるとき
に掲示されます。
白色のレース旗はFIAが主催する国際自動車スポーツ、あるいは北米で行われているインディカー・シリーズ、NASCARによって意味合いが違います。
黄色と赤色のストライプ旗(オイル旗)
結論
- このレース旗が掲示される区間は滑りやすくなっているという注意の意味で扱われる旗です。原則として静止して表示されます。
一般的にエンジンブローなどによってオイルや撒き散らされてしまったり、突如として雨が降ってきて水たまりが発生している時など、路面状況が著しく劣悪になってマシンのグリップ力が非常に低くなる可能性が発生した場合に掲示するものです。
また黄旗のように壊れたマシンを撤去するだけのような、危険性排除行為では解決できない路面の問題に対して掲示されることもあります。
黒旗(ブラックグラッグ)
結論
- ピットにドライバーを召還するために使用する旗です。
- 一般的にはルールに背いたドライバーやチームを処罰する為に使用され、対象車両のカーナンバーが書かれたサインボードも同時に掲出されます。
黒旗とサインボードに書かれたカーナンバーのドライバーは速やかにピットに戻らなければなりません。
黒旗の裁定は、ピットに居る当該マシンのチームスタッフにも伝達されます。ピットに戻った後は、競技規則で決められた位置にマシンを誘導し、審判団からの裁定に従わなければいけません。
なお、この黒旗掲示は3周までしか行われず、掲示から4周してもピットに入らなかった場合は失格です。
重大な事故などで全てのドライバーに対してピットに戻るように指示する場合は黒旗ではなく、赤旗を振って各ドライバーにレースが中断したことを知らせることになっています。
オレンジ円のある黒旗(オレンジサークルフラッグ)
結論
- 車両に問題があり危険な状態の時に掲示される旗です。スタートライン近くでゼッケンと共に掲示されます。
- ピットイン後は、技術審判員が修繕を監視し、修繕が完了したと審判員が判断するまでの間、ピットアウトできません。
初めてのF1視聴者向け!F1動画視聴に必須の用語解説


F1ルール用語
まずは、F1のルールに関して説明していきます。旗やポイントの詳細は前項をご覧ください。
107%ルール
決勝レース出場の要件を定めたもので、公式予選においてポールポジションタイムから107%以内のタイムを記録出来ないドライバーは、決勝レースへ参加できないというルール。決勝の前日までに、レーススチュワードが出場資格を判断します。
1996年から2002年まで施行された後に一時廃止されましたが、2011年シーズンより復活しました。「あまりにもタイムが遅すぎるチームの存在はレースを危険なものにする」というのがこのルールの設計思想です。
FIA規定8860レーシング・ヘルメット
FIA規定8860レーシング・ヘルメットとは、あらゆる安全規格の最高峰に位置するFIA規定8860をクリアしたヘルメットのことです。2019年シーズンからF1に導入されました。
クラッシュに際してヘルメットに加わる事が想定されるあらゆる種類の性能が確保されているのが特徴で、防弾チョッキやコンクリート補強材など幅広く使用されている繊維でできています。
アンセーフ・リリース
安全性に欠けるピットアウト(マシン発車)を行った際に科せられるペナルティ、あるいは当該危険行為それ自体の事を指す言葉です。
後続車の通過を確認せずにピットアウトさせ、ピットロード上で接触または接触しそうになった場合や、交換タイヤが締め付け不十分のままマシンを送り出し、ピットアウト後タイヤが外れてしまった場合等に適用されます。
レース中にアンセーフ・リリースを行った場合、ドライバーに対して10秒のストップ・アンド・ゴー・ペナルティです。一歩間違えれば大きな事故に繋がるため、厳しい処分が下されることになります。
クラッシュテスト
マシンがきちんと衝撃に耐えドライバーを守ることができるのかをテストすることをクラッシュテストと呼びます。
このテストはFIA指針に基づき、FIA技術代表(テクニカルデリゲート)立会いの下で実施され、F1のすべてのコンストラクターは必要な安全基準をクリアするための厳格な衝撃テストに合格しなければなりません。
グレード1規格
レースの開催されるサーキットは、レースの種類に応じてFIAが規定している規格(FIA Circuit Licence grades)をクリアしていなければなりません。
これは路面の平坦さ、コース幅、フェンスやガードレールなど、サーキットを構成するあらゆる要素に対して細かく基準が定めれており、FIAの査察を受けてこれらの基準を満たしていることを証明する必要があります。
F1の場合はこのFIA規格の内「グレード1」とよばれる規格を満たすことが要求されており、日本でこの規格を満たしているのは鈴鹿サーキットと富士スピードウェイの2つのみです。規格認定は3年毎に見直しが行われるため、3年に一度はFIAの査察をクリアする必要があります。
安全性を確保するために必要とされるのは、施設・設備そのものの安全性だけではありません。例えば医療体制についても細かな規定が。
レース週末には、サーキット内にメディカルセンターの設置が義務付けられ、外科医や麻酔科医をはじめとする6名の専門家の常駐する他、緊急搬送用に医療用搬送ヘリコプターを2機待機させておく事が必要とされています。
スーパーライセンス
F1世界選手権に参戦するために必要となるドライバー用の免許証のことです。
FIA国際自動車連盟が管理・発給するモータースポーツ界におけるトップレベルのライセンス。FIA国際スポーツ規則付則L項にて規定されています。有効期間は取得年の終わりまでとなるため、毎年更新が必要です。
なお、ドライバーのライセンスとは別に、競技参加者、競技役員、オーガナイザー、サーキット等のスーパーライセンスも存在します。
さらにスーパーライセンスの他に、F1のフリー走行のみの参加を許可する「フリー走行限定ライセンス」も存在し、これには、将来が有望視される若手をサポートすることが目的です。
ドライブスルーペナルティー
速度制限に従ってピットレーンを通過しそのまま停止することなくレースに合流することが義務付けられた罰則。
レース中最も多いペナルティです。このペナルティーによるタイムロスは、ピットレーンの長さに依存するためサーキットにより異なりますが、大体20秒~30秒程度になります。
ストップ&ゴーペナルティー
ドライブスルーペナルティーよりさらに厳しいペナルティーのことで、ピットに戻り10秒間静止(この間マシンに対する作業は禁止)し、その後コースに戻ることが義務付けられる罰則。
ドライブスルーペナルティーよりもさらに10秒以上のロスになります。
セーフティーカー
クラッシュやパーツ飛散などのレース中のアクシデントが起きた場合や天候が荒れた際に、安全確保のためにコース上で競技車両を先導するオフィシャルカーです。
ラップリーダーの前で隊列を先導し安全を確保する役割で、セーフティカー導入中は原則として全車追越し禁止となり、それまでに築かれた各マシン間のギャップはすべてゼロとなり、レースそのものがリセットされた状態となります。
これに準ずる「バーチャル・セーフティーカー」と呼ばれる仕組みも。
安全性に関わる危険がコース上に存在しているものの、レースを中断・中止する程ではない場合に出動。レースコントロールが危険解消を判断すると、セーフティーカーはピットへと戻り、レースが再開(リスタート)となります。
バーチャルセーフティーカー(VSC)
レース・予選・フリープラクティス中にアクシデントまたはコース上に何らかの危険があり、セーフティカーが出動するまでの危険度がないと判断された場合に、走行中のマシンをコース全区間に渡って強制的に減速させる安全上の仕組みのことです。Virtual Safety Car、略してVSC。
トークン(パワーユニット開発)
F1パワーユニット開発(アップデート)のために設けられた開発単位のこと。パワーユニットを42分割した各パーツごとにそのパーツのパフォーマンスへの影響度を考慮した1~3の数値を設定し、42分割した全てのパーツの数値を合算すると66となります。
2020年は2019年に引き続き、3トークン(PU全体の5%)に規定。
なお、年を減る毎に割り当てられるトークン数は段階的に減少していきます。つまり、徐々にPU開発は凍結されていく仕組みです。
トラック・リミット
走行しても良いコース幅の限界のこと。
コース上よりもコース外を走行した方がタイムが向上してしまうという問題に対処するため、2016年ハンガリーGPから電子センサーによってコース外へのはみ出しを検知し、違反した場合にはペナルティーが科せられることになりました。
各グランプリ毎に設定されたコーナーにおいて、走行しても良いコース幅限界値を設定し、この限界値をマシンの4輪全てが外れた(四輪脱輪)場合に、ペナルティーが課されます。
予選時:ラップタイムの抹消
決勝時:計4回の違反でドライブ・スルー・ペナルティー
パルクフェルメ
モータースポーツにおけるマシンへの不正作業防止のための「ルール」及び、そのルールが適用される「車両保管場所」、そしてルール適用された「状態」の3つを指し示します。
マシンは、カメラとモーションセンサーで遠隔監視されている各チームガレージ内で保管。一部例外を除いて、競技役員以外の何人たりとも侵入は許されません。
チーム関係者は立入禁止となり、各車両につき車両検査委員が1名割り当てられ監視します。
予選で一旦ピットレーンからコースへと出た瞬間に、マシンは”パルクフェルメ下にあるもの”とみなされ、決勝スタートまでそれが継続。
予選後は、例外を除いて翌日の決勝フォーメーションラップ開始の5時間10分前まで(夜間パルクフェルメ)は、カバーをかけての保管が義務付けられています。
パルクフェルメ下においては、エンジンの始動や燃料の出し入れ、タイヤの空気圧チェックやフロントウイングのフラップ調整など、僅かなものを除きマシンへの作業は原則として禁止です。
書面申請によって、FIAテクニカルデリゲートの承認が得られれば作業は可能になります。ただしパーツ交換を含む作業の場合は、交換前と同一仕様のものに限定。
例外として、予選から決勝までの間にコンディションが大幅に変化した場合には、安全上の理由から禁止作業内容が緩和されることも。
パルクフェルメ下でマシンを変更した場合、あるいはサスペンションのセットアップ変更を行った場合は、ピットレーンスタートが義務付けられています。
リタイア
何らかの理由で、レースを棄権することを指します。原因は下記3つです。
- メカニカルトラブル…何らかの原因で走行不可能、もしくは困難になった場合
- レースアクシデント…衝突によりマシンが破損して走行不能となった場合
- 失格によるリタイア…レギュレーションに反する行為が行われた場合
競技用語
F1レース中によく耳にする用語について解説していきます。
アウト・イン・アウト
コーナーを速く走るためのドライビングテクニック・理想的なコーナリングラインのことをいいます。
コーナーリングを3つのステップに分けて考え、「コーナー進入時はコース外側=OUT」「コーナー通過中はコース内側=IN」「コーナー脱出時はコース外側=OUT」を走るのが、最も速く走ることができるとされます。
コース幅を利用することによってなるべく緩い走行ラインを通過し速度低下を防ぐ技術なのです。
アウトラップ
ピットからコースイン(ピットアウト)した直後の1周目の事を指す言葉です。
アウトラップではまだタイヤが温まっていないのでグリップ力が低いためスピンしやすく、スピードも出ません。アウトラップをしてからタイム計測が始まります。対義語はインラップ。
アンダーカット
タイヤ交換を利用したオーバーテイク・テクニックのことです。
新旧タイヤのパフォーマンス差を利用してトラックポジションを上げる戦略の一つ。反義語はオーバーカット(英:overcut)。
以下、メカニズムを説明します。
”A”と”B”という架空のドライバーがレースをしていると仮定。
BはAの3秒前を走っていて、AとBともに全く同じペースで10周目のラップを走行中です。ピットストップにかかる時間(ピットレーン通過時間+作業時間)を20秒とします。
10周目の終わり、Aはタイヤを履き替えるためピットへと入りますが、Bはそのまま周回を続行。
ピットアウトした時点での両者の差は23秒です。新しいタイヤを履いたAは、当然Bよりも速いペースを刻む事が出来るようになります。ここでは1周あたり2秒速いペースと仮定。Aはニュータイヤのアドバンテージを活かして走行を続けます。
古いタイヤを履き続けていたBは、Aがピットストップを行った2周後、つまり12周目にピットへと入ることになりました。
AはBも1周あたり2秒速いペースで2周を走っているため、Bがピットインしたタイミングでの両者の差は19秒。
Bがタイヤ交換を終えピットから出てくるとき、Aはジャスト1秒前を走行、Bがピットから出てきた時にはAに抜かれていることになりますね。これをアンダーカットといいます。
インラップ
ピットに入る前(ピットイン)の直前の1周の事です。
ピットインの際にタイヤ交換をする場合、タイヤを使い切った方が有利であるため、インラップでは自己ベストタイムが記録されやすい傾向にあります。対義語はアウトラップ。
ウェット
路面が雨で濡れている状態のこと指す用語のこと。
レースで使用される晴天用のレースタイヤには基本的には溝が一切ないため、ウェット状態になってしまうとグリップがなくなってしまいます。
そのため恐ろしいまでに滑りやすくなり、路面とタイヤとの摩擦がゼロに近い状態にまで悪化するので、スピードが出ません。
ドライからウェットに天候が変わると、大体レースは荒れます。
エアロ・サーキット
高速コーナーが多く、高いダウンフォースレベルが要求されるコースレイアウトを持ったサーキットのこと。
一般に1周あたりの平均速度が高いため、高速サーキットとも呼ばれます。
鈴鹿(日本)、スパ・フランコルシャン(ベルギー)、シルバーストーン(イギリス)が典型的なエアロ・サーキットです。対義語はストップ&ゴーサーキット。
エイペックス
英語で「頂点」「先端」「頂上」の意味。レーシングにおいては、コーナーの内側の頂点を示します。
一般にコーナー1つに対して一つのエイペックスが存在しますが、複雑な形状のコーナーなどは複数存在する場合も(マルチ・エイペックス)。
オーバーテイク
モータースポーツにおける追い越しのことで、前を走行する車を追い抜かし順位を上げる行為を指します。
周回遅れを追い越してもオーバーテイクとはいいません(周回遅れの車は速い車が来た時は譲らなければなりません。青旗)。レースの醍醐味でもあります!
クリッピングポイント
コーナリング時のマシンの走行ラインの内、コース内側に最も近い地点を指す用語。
つまり、クリッピングポイントの位置は、コーナリングの仕方・走行ラインによって変化します。単に「クリップ」と呼ばれることも。
コーナーの物理的なイン側(コースの内側)頂点のことを指すエイペックスに対し、クリッピングポイントは”実際に走行したラインの中でのイン側の頂点”を示すため、微妙に意味が異なりますので注意が必要です。
エイペックスの位置は走り方に依存しないので、どんな走り方をしてもエイペックスの位置は変わりません。その一方で、クリッピングポイントは、マシン性能やドライバーの好み、路面コンディション等によって変化します。
コントロールライン
ホームストレート上にあるラインのこと。1周のラップタイムや周回数、順位などすべての基準となり、1000分の1秒まで計測されます。
通常はフィニッシュラインも兼ねていますが、スタートラインとは一致しないことが多いです。その場合スタートラインは前方に設置されます。
サイド・バイ・サイド
レース中にタイヤとタイヤが接触しそうなほど横並びに近づきバトルしている状態のことを指す言葉。
シケインなどでブレーキングを遅らせることでオーバーテイクを仕掛けようとする際によく見られます。
シェイクダウン
完成したレーシングカーの初めての走行のことをいいます。直訳すれば「ゆすり落とす」といったところで、原義的には「テスト走行」といった意味合いが。
マシンが上手く作ることができているのか、不具合は無いのかなどチェックのためにテスト走行を行うことをシェイクダウンと呼びます。シーズンの始まりとなる年頭にこぞって出てくるF1用語です。最近は「ロールアウト」などとも呼ばれます。
ショート・ラン
フリー走行及びテスト走行における予選を見据えた短距離の練習走行のこと。
ショート・ランは予選でのタイムアタックを想定して実施されるため、マシンにはほとんど燃料を積まない状態で行われます。燃料が軽い状態でのタイヤの磨耗、マシンバランスの把握が目的とされることが多いです。
チームはショートランの結果を踏まえてマシンのセットアップを変更したり、予選戦略を立てたりすることになります。なお、決勝レースを見据えた長距離の練習走行のことがロング・ラン。
スーパーライセンス
F1世界選手権に参戦するために必要となるドライバー用の免許証のこと。
FIA国際自動車連盟が管理・発給するモータースポーツ界におけるトップレベルのライセンスで、FIA国際スポーツ規則にて規定されています。有効期間は取得年の終わりまでとなるため、毎年更新が必要です。
ドライバーのライセンスとは別に、競技参加者、競技役員、オーガナイザー、サーキット等のスーパーライセンスも存在します。
なおスーパーライセンスの他に、F1のフリー走行のみの参加を許可する「フリー走行限定ライセンス」も存在し、将来が有望視される若手をサポートすることが目的です。
スターティンググリッド
レーススタート時の位置・順位のことです。
予選タイムの早かった順に並び、各マシンはフォーメーションラップを終えた後、各自のグリッドに着きます。
トラブル等の理由で、スターティンググリッドからレースをスタートできないマシンがいる場合(ピットスタートやリタイアなど)は、その位置を空けて各車が並ぶ決まりになっており、繰上げはありません。
マシンを止める場所には白線で印が付けられていて、各マシンは自分の予選順位に基づく決められた場所にマシンを停止。
近年では、マシンが規定位置に止まっているか、白線を踏み出していないか、フライングしていないか等が、センサーによって自動測定されています。
きちんと止まっていないマシンがあると、再度のフォーメーションラップです。
ステイアウト
ピットストップを行わずにコース上に留まり、そのまま走行を続けることです。
戦略的な観点から、他チームのピットストップと意図的にタイミングをずらすために、ピットストップのタイミングが来てもそのまま走行を続けることがあり、ステイアウトはこのような際に使われます。
ステイアウトが行われるということは「他チームとは別の戦略を取った」「勝負に出た」ということであり、レース結果を左右する1つの分岐点になる可能性が。
スティント
決勝レースをピットインのタイミングで区切った単位のこと。
第1スティントはスタートから1回目のピットインまでの間の周回を、第2スティントは2回目のピットストップから3回目のピットストップないしはゴールまでの周回を指します。
F1決勝レースでは、最低1回のピットストップかつ最低2種類のタイヤ使用が義務付けられているため、必ず複数スティントのレースになります。
ストップ&ゴーサーキット
ストレートとストレートをヘアピンやシケインでつないだサーキットのこと。
運転中にスロットル全開とフルブレーキを繰り返すことからそう呼ばれています。簡単に言うと止まるか、それとも真っ直ぐ走るか、というのが特徴のコースレイアウトです。
ジル・ビルヌーブ(カナダ)、イモラ(ブラジル)、モンツァ(イタリア)が代表的なサーキットに挙げられます。対義語はエアロサーキット。
スリップストリーム
前方を走るマシンの真後ろに発生する空気抵抗が小さいエリアのこといいます。
「トウ」「トゥ」とも言い、「スリップストリームを使う」「スリップに入る」等のように使われることが多いです。
スリップストリームに入ると空気抵抗が減少、走行速度が大幅に向上し、結果としてオーバーテイクや追い上げのための強力な武器となります。
100分の1秒、1000分の1秒を争うモータースポーツ競技においては、スリップストリームを使わず前走車を交わすことはかなり難しいです。
スリップによる速度向上の恩恵は、原則として直線コース・ストレートを走行する場合に限られます。
コーナリングにおいては、スリップストリームに入る事によって逆に速度が低下。
これは空力マシンである現代のF1マシンは、”キレイな空気”=乱れのない空気がマシンにぶつかることを想定して設計されているためです。前走車が発生させる乱気流下では、前方からの空気量の減少や車を押し付ける力(ダウンフォース)を大幅に失うなど、マシンコントロールができず事故の危険が。
また、長くスリップを使いすぎると、エンジンやブレーキ等の冷却(空気による冷却)が十分に行われなくなり、これらがオーバーヒートする可能性が出てきます。
スリップストリームは車両の速度や形状、気象条件等によって異なりますが、F1においては100m以上の距離があってもスリップが効くようです。
1周の純粋な速さを競う予選において、スリップストリームはしばしば有効な戦略として採用されます。
ロングストレートを持つモンツァやバクー市街地コース等においては、チームメイト同士が協力し合い、互いのスリップストリームを相手に利用させることで、ラップタイムの向上を目指す事がありますが、使う使わないで揉めることもしばしば。
セクター
サーキット全体を3つの区間に分けた各々のコースのこと。
1周のタイムとは別に、セクター毎にタイムを計測しています。スタートラインから1つ目の区間をセクター1、2つ目をセクター2、3つ目をセクター3と呼びます。
このようにコース1周を3分割する事で、各々のドライバーやマシンが、コースの中のどの場所が得意なのか、速いのかが把握することが可能です。
テール・トゥー・ノーズ
レース中に前のマシンの後部と後のマシンのノーズとが触れてしまいそうな位接近してバトルしている時に多く使われます。
ちなみに「テール・トゥー・ノーズ」は和製英語であり、英語圏ではバンパー・トゥー・バンパーとも呼ばれるようです。レース中のバトルに関する似たような言葉として「サイド・バイ・サイド」があります。
ここ最近のF1ではレギュレーションによるマシン特性の関係上、前を走行するマシンの気流の乱れが激しく、後続のマシンがこれに接近することが極めて難しいです。
近付こうとするとダウンフォースが安定しないため、テールトゥノーズには中々持ち込めません。
ドライ
雨などがなくコースの路面が乾いている状態のこと。逆に濡れているコンディションのことをウエットといいいます。
トワイライトレース
日没前後からスタートするレースのこと。
日没前にレースが開始されゴールの時には完全に陽が落ちた状態となることから、レース中の路面温度や気温の変化が大きく、難しいコンディションでのレースになります。
バーレーンGP、アゼルバイジャンGP、アブダビGPが主なトワイライトレースです。
バックマーカー
周回遅れの車・ドライバーのこと。
周回遅れにされそうなマシンには、マーシャルから「ブルーフラッグ(青旗)」が提示され、この旗が出されると対象マシンは後ろから来るマシンに道を譲らなくてはならないルールになっています。
追い越す側の先頭争いをしているマシンにとっては、いかにタイムロスなくバックマーカーを処理できるかが勝負の分かれ目です。
ピットストップ
レース中ピットに入ってタイヤ交換などを行うことを指します。
ピットストップ中もレースのうちなので、コンマ数秒が勝敗を決するF1では、迅速にピット作業を終えるかが非常に重要です。
レッドブル(Red Bull)は、2019年第20戦ブラジルGPで最速ピットストップ記録を更新する“1.82秒”をマークしました。タイヤ交換のみの通常のピットストップで平均2秒ほどです。※映像は、1.82秒出す前に最速記録を出した時のもの。
あまり知られていないですが、2016年シーズンからF1では「ピットストップ賞」なる栄誉が創設されました。
これまで、ピットストップに定評があったのが「ウィリアムズ」でした。2019年は「レッドブル」が自らの世界最速を塗り替える形となり、ピットストップ賞に選ばれました。
ピットボード
ドライバーに現在のポジションや前や後ろの車とのタイム差などを伝えるために用いるボードのことで、各チームがピットウォールからコースに突き出すように掲げることでドライバーに情報を伝えます。サインボードと呼ばれることも。
カーボンファイバー製のフレームに、予め用意しておいた”黒いプラスチックに印刷された文字パネル”を取り付ける形をとっています。
無線はあるし、黒いプラスチックなんかはめ込まずにディスプレイにするとかLEDボードにすればいいとか、ましてや近年のF1のステアリングにはディスプレイが設置されているじゃないか思われますが、プットボードを使っているにはちゃんとした理由があります!
- 無線が壊れた時の予備用
- 視覚情報の方が直感的かつ簡潔に情報伝達ができる
- 無線(聴覚)による情報伝達は集中力を妨げる
- ディスプレイは重く、太陽光の下では読みづらい
機械は壊れるかもしれないといったところでしょうか。
ファステスト・ラップ
決勝レース中に記録された最も速いタイムのこと。全ドライバーが出したタイムの中で最も速いタイムのことを指します。
ただし稀にですが、各ドライバー毎の1番速いタイムを指すことも。
ファステスト・ラップは歴史に刻まれるため、優勝や表彰台の見込みがなくなった10位以内のマシンが、レース終了直前の燃料が軽くなった状態でピットインし、新品タイヤに履き替えてファステスト・ラップに挑むことも多くあります。
10位以内のファステスト・ラップはドライバーズポイントを1点加算。一般には「ファステスト」と省略して呼称されることがほとんどです。
フォーメーション・ラップ
決勝スタート前にマシン全車がコースを1周すること、及びその周回のことを指します。またはローリング・ラップ、パレード・ラップ。
フォーメーションラップの目的は、コース上の安全確認と車両の最終チェックです。
コース上がウェットな状態だったりなど、セーフティーカー先導で行われる場合も。マシンを激しく蛇行させてタイヤを温めたり、ブレーキを強く踏むことで適切な温度を維持させようとする光景が多く見られます。
観戦している側としてはその光景や音を聞いてテンションがあがり、一番ドキドキする瞬間です。
フォーメーションラップ中は追い越し禁止であり、マシントラブルが発生して走行できなかったりした場合は、原則としてそのマシンはピットレーンスタートになります。
フォーメーションラップを終え、スターティンググリッドに着き、シグナルが消えるとレーススタートです。
ポール・トゥー・ウイン
決勝レースをポールポジションでスタートしそのまま優勝する事を指します。2019年終了時での最多はルイス・ハミルトンの50回です。文字表記では多くが「PP」。
モナコGPやスペインGPなどのオーバーテイクが困難なサーキットでよく見られます。
ポールポジション
予選で1番速いタイムを出したマシンが獲得するスターティンググリッドの事を指します。
純粋に「マシンが速い」ということでもあるので、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンがポールを獲った時は嬉しかったとホンダの開発の方がおっしゃっていました。
オーバーテイクをしにくいサーキットでは圧倒的に有利になるので、ポールを獲っておきたいところです。ただしレギュレーションによっては必ずしもポール・ポジションが有利というわけでもありません。
ボックス
レース中のドライバーに対するピットイン指示のこと。「ピットに入って!」という合図です。
ピットガレージ前にあるマシンを停車させるところを示す白線または黄線で描かれた四角形の枠をピットボックスと呼んでおり、そこから来ています。
“Box this lap”とか”Box box box”
というエンジニアからの無線が入るとその周でピットイン。ピットストップは大事な戦略のため、「この周で入って!」というようにピットに入る直前にしか聞けない無線です。
ラップ・レコード
そのサーキットで過去に記録された決勝レース中の最速ラップタイムの中で最も速いタイムの事です。史上最速のレースラップタイムをラップレコードと呼びます。予選や練習走行で記録された最速タイムはこれに含まれません。
ラップレコードは、コース上での競争が行われる決勝レースが対象となります。
F1においては予選最速タイムではなくラップレコードが重要とされますが、その理由は過去のレギュレーションから。
かつてのF1では予選専用エンジン、予選専用タイヤ(Qタイヤ)なるものが許可されていた時代があり、歴史を通してそのコースで最も速いタイムを比較するのには適さないためです。
予選・決勝・練習走行の区別なく、そのサーキットでの史上最速タイムの事は、「コース・レコード」「オール・タイム・ラップレコード」または「サーキット・ベストラップ」と言い、史上最速予選タイムは「ポール・ラップレコード」と言われます。
多くの場合、予選の方が搭載燃料が少なくタイヤも新しいため、ポール・ラップレコードはラップレコードよりも速い傾向が。
近年のF1マシンは過去と比較してかなり速くなっており、ポール・ラップレコード及びコース・レコードは日々更新されていますが、現代のF1における決勝レースは、タイヤ及び燃料マネジメントが要求されるため、ラップレコードは更新されにくい現状です。
レコードライン
サーキットにおける理想的な走行ラインのこと。最も早く走ることができるラインはコースによって決まっており、どのマシンもこのラインを狙って走ります。
皆が同じ場所を走るので、地面のほこりやゴミがなくなります。F1のタイヤは熱が入ると溶けるようになっており、その溶けカスが地面につくことでレコードラインが黒く変化。これによって、タイヤのグリップ力があがるのでタイムが上がります。
雨が降らなかったり、路面温度が変わらない場合の予選は、最後に走った方が有利ということです。
レース中は、周回を重ねるごとに速く走ることができるようになり。更にレコードラインを走ることでタイヤへの負担が軽減され、持ちが良くなります。
ただウエットレースの場合は別です。路面がドライとウェットが混ざったような状態の時にウェットタイヤを履いて多くの車が通って乾いているレコードラインを走ってしまうと、タイヤがすぐに傷んでしまったりタイムが出なかったりします。
これはウエットタイヤが水の溜まっている場所を走るように作られているためです。
ロング・ラン
フリー走行及びテスト走行における決勝レースを見据えた長距離の練習走行のこと。
決勝レースは最低1回のタイヤ交換が義務付けられているため、1つのタイヤセットで複数周回を走行する必要が出てきます。ロングランは、タイヤがどのくらいもつのか確認するテストの場でもあるのです。
長距離走行を意味する言葉の通りで、レース・シミュレーションと捉えられます。
ロング・ランは決勝レースを想定して実施されるため、マシンに多くの燃料を積んだ状態でのタイヤの磨耗の把握やマシンバランスの把握と改善化が目的です。
ロングランの結果を踏まえてマシンのセットアップを変更したり、決勝レースでの戦略を立てます。逆に予選でのタイムアタックを見据えた練習走行のことはショート・ラン。
コース・設備用語
サーキットの設備やコースに関する用語をご紹介します!
インナーレーン
ピットレーンと呼ばれるピットエリア内の走行路場所の内側、ガレージ側の方のレーンのことを指します。インナーレーンよりもピットウォール側のレーンはファストレーン。
ファストレーンはアスファルト舗装されていますが、インナーレーンはコンクリート舗装である場合が多いです。これは万が一燃料がこぼれてしまった場合にアスファルトだと溶けて傷んでしまうため。
レース中にピットストップ作業が行われるのがインナーレーンです。
インフィールド・セクション
ストレートをコーナーで繋いだだけの単純なレイアウトを持つコースの内側に増設されたコース区間の事をいいます。
オーバルコースが発達したアメリカ大陸のサーキットで良く見られますが、加減速とコーナリングをレースの重要な要素として考えるヨーロッパのコースにおいてはあまりポピュラーではありません。
ブラジルのインテルラゴス・サーキット、英国のシルバーストーン・サーキット、ハンガリーのハンガロリンク等がインフィールド・セクションを持つ代表的なサーキットです。
「インフィールド・エリア」「インフィールド」と言った場合には、コース内側の”観戦席”あるいは、ただ単にコース内側そのもの等を指す場合があります。
エイペックス
英語で「頂点」「先端」「頂上」の意味。レーシングにおいては、コーナーの内側の頂点を示します。
一般にコーナー1つに対して一つのエイペックスが存在しますが、複雑な形状のコーナーなどは複数存在する場合も(マルチ・エイペックス)。
エスケープ・ゾーン
安全性確保を目的としてコース両脇に設けられたスペースのこと。砂利や砂、芝生などで覆われており、コントロールを失ったマシンを効果的に減速させることが目的です。
エスケープ・ゾーンは、ランオフ・エリアとも呼ばれます。エスケープゾーンのより詳しい説明についてはランオフエリアをご覧ください。
グラベル
モータースポーツ全般としては「非舗装路面」の事を、F1の場合には「砂利または土を敷き詰めたランオフエリア」の事を指します。
レース中にマシンがコースアウトすると、観客を巻き込むなどの危険な事故につながる可能性が。
そのため、グラベルを設置することでクラッシュしたマシンのスピードを落として激突を防いだり、激突の際の衝撃を和らげたりする役割があります。
場所によってはかなり深く砂利が敷き詰められており、一旦グラベルにハマってしまうと抜け出すことができずにそこでレース終了、リタイヤとなるパターンが多いです。
また、リタイヤとならずとも、砂利がマシンにダメージを与える事も多く避けたい場所でもあります。
シケイン
マシンの速度を落とす目的でつくられた鋭い角度のS字コーナーのことです。
短い区間内に左・右、あるいは右・左と左右に連続して設けられる。長めの直線コースの終点に作られる事が多いため、オーバーテイクのポイントになりやすい場所でもあります。
大抵は超低速のコーナーになりますが、鈴鹿の最終シケイン、スパのバスストップシケインなど高速のシケインも存在。
モンツァサーキットのアスカリ・シケインは高速S字コーナーですが、シケインの名がついている特殊なコーナーです。
ダミーグリッド
決勝レース直前に実施するフォーメーションラップスタートの際に使用される一時的なグリッドのことです。
決勝レースをスタートさせるスターティンググリッドは、フォーメーションラップが完了することで確定。フォーメーションラップ走行が始まる前の一時的な仮のグリッドのことを便宜的にダミーグリッドとも。
ダミーグリッドはスターティンググリッド同様、ホームストレート上に設けられています。
ピットレーン出口の開放が行われ、マシンはコースを1周してダミーグリットへ。時間になりフォーメーションラップを行い、スターティンググリットに止まります。ここからレースが開始するという流れです。
バック・ストレート
サーキット上に位置するゴールライン反対側の直線走路(ストレート)の事を指します。反対語はホーム・ストレート。
パドック
ピット裏のスペースのことでチームのトランスポーター、モーターホームなどがあり、ドバイバー・チーム関係者などがサーキット内で過ごす場所。
運営関係者・チーム関係者以外は原則として立ち入ることができませんが、多くの場合パドックパスと呼ばれるチケットを購入することで、一般の観客もパドックに入ることが可能です。
ドライバーや関係者らが取材に応じたり、食事やミーティングなどをすることから、「サーキットの社交場」と言われることもあります。
パドック内には普通にドバイバーがたむろしているため、ファンとしてはたまらない場所です!
F1の場合はパドックパスは販売されていませんので、パドック内に入りたい場合には「パドッククラブ」と呼ばれる観戦ルームチケットを購入することでパドックに入ることができるようになります。
金額は2020年日本GP(鈴鹿サーキット)で1人60万円です。ツアーだったりと特典はありますが。
バンク
カーブの外側が高くなっているコーナーのこと。
速度を落とさずにコーナーを曲がることができるように、このような傾斜がつけられています。インディアナポリスの最終コーナーや上海の13コーナー、そして鈴鹿の6コーナーなどが有名どころです。
バンクはコーナーを曲がるときに生じる遠心力を相殺してくれるので、スピードを落とさずにコーナーを曲がることができるようになります。
コーナリングの基本は、充分に速度を落として曲がるスロー・イン・ファースト・アウトが鉄則ですが、バンク角のついたコーナーでは、ファースト・イン・ファースト・アウトが可能です。
レース中の事故の多くは高速で進入可能なコーナーで起きることが多く、コーナリング時の事故は制御が難しいので被害も大きくなりやすい傾向に。
通常バンクの傾斜はコーナーの外側が高くなるように作られますが、稀にその逆、つまりコーナーの内側が高いバンクも存在し、これを逆バンクといいます。
逆バンクで有名なコーナーは鈴鹿サーキットの6コーナー、通称「逆バンク」。
とは言え実際には、鈴鹿サーキットの逆バンクはほとんど傾斜はついておらずフラットです。鈴鹿の場合、S字コーナーから「逆バンク」に入るため、目の錯覚が起きていると思われます。
バンプ
コース上路面の凸凹のことをいいます。バンプがたくさんあるサーキットをバンピーなサーキットという言われ方も。
モナコやシンガポールなど公道のサーキットに多く見られ、よくドライバーが「バンピー!バンピー!」と言っています。
「バンピー」なサーキットではサスペンションの性能が問われ、ドライバーの負担も相当なものに。市販車でも凸凹した道を通ると車が跳ねますね。
F1のマシンは剥き出しの箇所が多いので、サスペンションを痛めたり、マシンが跳ねてパーツが飛んでしまうこともあります。
ピット
各チームのサーキット内ガレージのこと。
レース中のタイヤ交換、緊急作業は全てここで行われます。ホームストレートに並行して数十のピットが作られていて、レースになると各チームに割り当てが。
ピットの位置は、前年のコンストラクターズランキング順で決まることになっています。
ピットで作業する人の事を「ピットクルー」、コースとピットを繋ぐ道は「ピットレーン」。
安全上の観点からピットレーン走行においては、レギュレーションにより速度が規定されています。
2019年のスポーティング・レギュレーション(競技規則)からの抜粋です。
ピットレーンにおいて、競技会全体の間、80km/hの速度制限が適用される。しかしながら、FIA F 1セーフティーデリゲートからの勧告があれば、競技審査委員会がこれら制限値を変更できる。
一切のプラクティス走行(フリー走行、予選)の間、速度制限を超えたドライバーのチームは、制限を超 える各km/h毎に100ユーロ、最大で1,000ユーロまでの罰金が科せられる。
しかしながら、第18条1に従い、競技審査委員会は、ドライバーの速度違反が何らかの優位を得るため になされたと疑われる場合には、追加の罰則を科すことができる。
決勝レース中にこの制限速度を超えたドライバーに対して、競技審査委員会から第38条3 a)、b)、 c)あるいはd)の何れかのペナルティが科せられる。
ピットウォール
ピットレーンとコースとの間に設けられた壁及び細い通路のことで、ピットレーンとコーストを隔てるために設けられるスペースです。
ここには、ピットウォール・スタンドやサインボードエリアが設置されます。一般には、”ピットウォール”と”ピットウォール・スタンド”が混同されて使われていることが多いようです。安全上の理由から現在では壁の設置が義務付けられています。
ピットウォール・スタンド
ピットレーンとコースとの境にあるピットウォールに設営されたチームの司令基地のことです。
レース中にチーム代表や戦略スタッフなどがいる場所で、レース中もしばしば映ります。様々な情報を表示するためのモニターや通信機器が設置されており、ここから各ドライバーへの指示が。
ピットウォール・スタンドはレースの指令基地、つまりレース中に発生するあらゆる事柄に対して迅速かつ的確に意志決定をおこなうための場所であるため、レース戦略の決定権を持つ重要人物がいます。
- 各ドライバーのレースエンジニア
- チーム代表あるいは副チーム代表
- テクニカルディレクター
- パフォーマンスエンジニア
- レーシングディレクター
- その他のスタッフの上級メンバーなど
レッドブルのクリスチャン・ホーナー、フェラーリのマッティア・ビノットはピットウォールにいる姿が捉えられていますが、メルセデスのトト・ヴォルフはガレージに入ることが多いようです。また、リタイヤしたドライバーが報告に向かう姿もよく見られます。
天気予報、路面の状態・温度、コース上での自チームマシン及び他チームマシンの位置関係、レースコントロールからの情報等などの情報が全て集まってきて、戦略を練っている場所です。
また、ルール上あるいは技術上の問題が発生した場合、即座にレースディレクターと交信できるようにするために、FIAのレースディレクターとの無線も常時接続されています。
ファストレーン
ピットエリア内のマシン走行路、ピットレーンの中のピットウォール側のレーンのこと。
ファストレーン=Fast Laneであり、直訳すると”高速レーン”となります。
これは同じピットレーンの中のガレージ側のレーンのことをインナーレーン=Inner Laneと呼称することから。FIAの規則によって、ファストレーンの幅は最大3.5mと定められています。
ホワイトライン
ピットレーン入り口と出口にある白いラインのこと。
サーキットにもよりますが、出入口それぞれ30mずつくらいににあります。ピットに入る車、出る車はこのラインの内側を通らなければなりません。
29週目にクラッシュしてピットに戻ることになってしまったルイス・ハミルトンですが、完全にアウトです。5秒ペナルティーを課されました。
モーターホーム
パドック内にあるチームスタッフが活動の拠点とする移動式の家のこと。
部屋あり、食事スペースあり、移動式の家みたいなものです。行く先々のサーキットで組み立てられるものですが、決して簡易的なものではなく豪華な造りになっています。
ホンダのモーターホームで出される和食、寿司が人気なんだとか。
ランオフエリア
マシンがコースオフした際の安全性確保のために設けられたコース両脇のスペースのこと。マシントラブルが発生した場合のコース外避難スペースとしても使われ、エスケープ・ゾーンと呼ばれることも。
コース外に飛び出してしまったマシンがフェンスや壁、観客などに衝突するのを可能な限り防ぐため、ランオフエリアには砂利や芝生、砂などが敷き詰められています。
これによって、効果的にマシンを減速させられる仕組みです。コーナーの種類や性質によって使用する素材を決定しています。使われる材料によって以下のように呼び名が変化。
- 芝生の場合・・・グリーン
- 土や砂利の場合・・・グラベル
- 砂の場合・・・サンドトラップ
近年はアスファルト舗装のランオフエリアも増えてきています。
アスファルトの場合、他と比べてコース復帰が容易であり、ブレーキによる減速が可能な点が特徴です。
ですがコントロールを失ったマシンの減速という点ではアスファルトは不充分なため、通常のランオフエリアよりもかなり広めに取られていることがあります。下の画像はは2019年のフランスGPに突如現れた「しましま」模様のランオフエリア。
この「しましま」は、摩擦係数の高い塗装(サンドペーパーみたいなイメージ)をしたランオフエリアです。
縞模様にしたのは視認性と芸術性を高めるためで、ポール・リカール・サーキットはこれを「ブルーライン・コンセプト」と呼んでいます。
場所によっては青いラインの奥に赤いラインも。赤は青よりも摩擦係数が高く、青いエリアよりももっと急激に速度を落としたい場所に施されています(白いラインは単なる模様)。
色の区別を付けることで、ドライバーは摩擦係数の変化に対して身構えることができるとのこと。
コースから外に飛び出してもタイヤが砂利や土に埋まることはなく、すぐにコースに復帰することはできるようになりますが、タイヤはやすりで削られたようにボロボロになって減速する仕組みです。
観戦中、目がチカチカするのは如何なものかと思いますが。
縁石
コーナーの内側と外側に設置される突起物のことです。英語ではカーブストーン。
コース外のオーバーランに対する警告の他、グラベルの土砂や芝生がコース上に流入する事を防ぐためのものでもあります。コースやレースに応じて様々な高さの縁石が設置。
「危険だから」という理由で設置される縁石ですが、ドバイバー縁石をガンガン乗り越えて走行していきます。
アウト・イン・アウトの原則を紐解けば明らかなように、コーナーをより高い速度で通過しようとすれば、可能な限りコーナーのイン側を走行しコーナーを抜けたら可能な限りアウト側を走行することが必要です。
そうなると必然的にイン側に設置された縁石と、コーナー脱出後のアウト側に設置された縁石に乗らなくてはなりません。
いかに縁石をうまく使えるか、これがタイムに大きく影響してきます。その為にはしなやかなサスペンションが必要不可欠です。
良いサスペンションがないのにも関わらず縁石に乗り上げてしまうと、かえってタイムを失ったり、サスペンションが破損することになりかねません。
タイヤ用語
ここでは、タイヤに関する用語を説明していきます!
インターミディエイト
インターミディエイト・タイヤの事であり、モータースポーツ用の雨用タイヤ(レインタイヤ)の1種をのことです。
インターミディエイト・タイヤは雨用タイヤの中でも「小雨用」に特化したタイヤとなっており、タイヤ表面には排水用の溝が掘られています。
レーシングタイヤは濡れた路面での走行を考慮せずに作られているため、路面が少しでも濡れてしまうとその性能が発揮できません。
そこで雨用タイヤとして小雨用のインターミディエイトと、大雨用のエクストリームウェザー(フルウェット)の2種類が用意されています。
雨用ではない乾いた路面を走行するためのレーシングタイヤをドライ・タイヤと言いますが、ドライ・タイヤとレイン・タイヤはタイヤ表面の溝だけでなく、素材そのものも異なっているのが大きな違いです。
オプションタイヤ
各グランプリで供給されるタイヤセットの内、柔らかい方のタイヤのことを指す用語です。
時代により多少の違いはあるが、F1では各グランプリ毎に柔らかさの異なる2種類以上のタイヤを供給。このタイヤの内、硬いコンパウンドのタイヤのことをプライムタイヤ、柔らかい方のタイヤのことをオプションタイヤと言います。
昔はタイヤの耐久性が極めて低かったため、いかにタイヤ交換回数を少なくさせるかがレース勝利への大きな鍵で、供給されるタイヤの内、決勝レースでは硬い方のタイヤが重要でした。
そのため、当時は硬い方のタイヤのことをプライム(=最も重要な、主要な)と呼び、柔らかい方の優先度の低いタイヤをオプション(=予備の)と呼んでいたようで、その名残が今に残っているようです。
グリップ
路面との摩擦力、タイヤが食いつく力のこと。「グリップがない!」というような感じで使われます。ドライバーからの無線で聞かれることが多いです。
「グリップがある」というのは、すなわちタイヤが滑らない、意図したポイントでちゃんと減速できる、加速力があるということになります。
掃除で使うコロコロをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。濡れてしまうとひっつきませんよね。あの引っ付く感じがグリップがある状態です。
グレイニング
タイヤの溝の端の部分のゴムが削れてカスとなり、それがトレッド面に付着しタイヤがささくれてサメ肌のようになること。
タイヤの温度が上がらない状態(タイヤ交換後すぐなど)で走行を続けたり、コーナリング時のマシンスライドが多発する場合などに、トレッド表面が綺麗に磨耗せず、結果としてグレイニングが発生します。
グレイニングが起こるとタイヤの表面が路面に対して均一にならず、グリップが大幅に低下し、結果ラップタイムが低下。
通常は周回を重ねていくうちにだんだんタイヤが綺麗になってグリップが回復してくることが多いですが、マシンのセッティングが悪いとずっとそのままなこともあります。類義語はブリスター。
コンパウンド
タイヤの素材として使われる材料、またはゴムの配合設計のこと。
転じて一般的にはタイヤのゴムの性質そのものを指すことが多く、ハードタイヤ=ハードコンパウンドのタイヤ、ソフトタイヤ=ソフトコンパウンドのタイヤといった感じです。
ソフトコンパウンドの特徴はグリップが良い分タイヤの摩耗が早く耐久性がないので、長時間の安定走行には向きません。
一発のタイムが出しやすいので、予選や決勝のファステスト狙いで使われることが多いです。対してハードコンパウンドの特徴は、ソフトと比べグリップは劣るがその分耐久性があります。決勝向きのタイヤということですね。
ソフトとハードのタイム差がほとんどないサーキットなどではドライバーの好みに応じて選択されることも。マシンのセッティングでも変わってきます。
サーマル・デグラデーション
デグラデーションの一種であり、言葉通り熱を原因とするタイヤ性能劣化のことです。
サーマル・デグラデーション発生には以下の2つの原因が考えられます。
- 熱によってゴムの組成が変化してしまうことで性能が低下
- 熱によってゴムが柔らかくなりすぎ変形してしまうことで性能が低下
変形による原因の場合、その後のタイヤマネージメントによっては性能が復活しますが、熱による組成変化が原因の場合、もうそのタイヤは使い物にはなりません。
スクラブ
新品タイヤを装着して何周か走行することで、タイヤに熱を通し”慣らす”ことを指します。グレイニングなどの予防、安定したパフォーマンス向上などが目的です。「皮むき」とも。
タイヤに含まれる成分は、一度熱を通して冷やしたりすることで安定性が増すと言われてます。
この作業を行わないとサーマル・デグラデーションが酷く現れたりするそうです。そのため、スクラブにはこういった目的のために行われることもあります。
スリックタイヤ
表面に溝がないがツルツルしたタイヤのこと。
接地面が多くなるので溝付きのタイヤに比べて圧倒的にグリップが大きいのが特徴です。現状のスリックタイヤはドライ用のタイヤと言えます。対義語として、溝のついたタイヤ(グルーブドタイヤ)。
スピード抑制を目的として1997年をもって使用禁止、98年から溝付きタイヤ(=グルーブドタイヤ)に取って代わられ、2008年まで禁止。
2009年のレギュレーション改正によってダウンフォースが大幅に削られることになり、タイヤ以外のパフォーマンスが劇的に低下したのを機に復活しました。
スローパンクチャー
直訳するとゆっくりとしたパンク。タイヤに傷などがあり、徐々に空気が抜けていくことを指します。この状態に気がつかず高速走行を続けるとバーストを引き起こしたりすることも。
タイヤウォーマー
タイヤを暖めるためのカバー。中にニクロム線が入っており、それが熱くなってタイヤを温めています。
レース用タイヤは超高速走行が前提なので、低温時のグリップ性能は低いです。
タイヤの適正温度が80~100℃。正確にはトップトレッド(タイヤの表面温度)80℃、サイドウオール(タイヤ側面)100℃。タイヤウォーマーをつけてから適正温度まで上がるには2時間くらいです。
スタート直後からグリップを確保するために、スターティンググリッドに着いたマシンには直前までタイヤウォーマーが巻かれています。
ピットストップやスタート直前に取り外される映像が流れるので、見たことがあるでのでは。カバーには間違えないように、LEFTとかRIGHTという形でちゃんと書いてあります。
デグラデーション
走行することで生じるタイヤの性能劣化のこと。
当然新品タイヤの方が性能が高く、周回数を重ねるにつれてタイヤはどんどん劣化し性能低下していく、ということを指します。略して「デグラ」とも。
デグラデーションは、サーキット・路面温度・ドライバーの運転スタイル・マシン特性等の影響を受けます。熱の影響によるデグラデーションのことはサーマル・デグラデーション。
デグラーデーションレートとは、”劣化の程度”を意味しますが、実際には「1週あたりどの程度タイム低下するのか」という観点で使われます。「このサーキットのデグラデーションレートはコンマ3秒」などのように使われることが多いです。
バースト
タイヤが破裂することを指します。
傷つけられたり、ブリスター、フラットスポットなどがバーストの原因になることが多いです。バーストはタイヤの機能が失われるため、クラッシュなどの事故を起こしやすくなります。
ピレリ
イタリアの世界第5位のタイヤメーカー。2011年からブリジストンに代わり、F1に単独でタイヤを供給しています。
プライムタイヤ
各グランプリで供給されるタイヤセットの内、硬い方のタイヤのことを指す用語。
各グランプリ毎に柔らかさの異なる2種類以上のタイヤが供給されることになっており、柔らかいコンパウンドのタイヤのことをオプションタイヤ、硬い方のタイヤのことをプライムタイヤと呼びます。
何故”ソフト”ではなく”オプション”と呼ぶのか?知りたい方は「オプションタイヤ」をご覧ください。
フラットスポット
急ブレーキなどでタイヤがロック(回転が止まってしまうこと)した際に、地面と接触したタイヤの一部分が摩擦により削られ、平面になってしまう事を指します。
部分的に平らになってしまったタイヤで走るとガタガタしてしまい(バイブレーション)、そのまま走り続けるとサスペンション等が振動によって破損することが。マシンの挙動が乱れ、ドライバビリティが悪化しタイムも低下していきます。
一度フラットスポットができてしまうと、同じ箇所で再度ロックする可能性が高まり、更にフラットスポットが悪化して、一切良いことがないのでタイヤを交換するはめに。TV中継のスローVTRの際に注意深く観察すると、フラットスポットができていることがわかります。
ブリスター
タイヤの温度が上昇しすぎて内部が沸騰、タイヤ表面が膨れ上がったり気泡ができたりすること、オーバーヒート状態。これができるとタイヤの性能が極端に悪くなり、グリップが落ち、タイムも落ちます。
路面温度が高い中でのレースや、ビックブレーキングが多いコースなどの場合に発生しやすい傾向です。
グリップが不足してる場合、路面と上手く設置せず空転し結果タイヤの温度が不必要に上昇するため、ダウンフォース不足も一因となりえます。類義語はグレイニング。
マーブル
タイヤの摩耗によってコース上に散乱するタイヤカスのこと。お菓子のマーブルチョコレートにその見た目が似ていることから「マーブル」と呼ばれています。
一般的な市販車両で使用されるタイヤカスは非常に細かな粒子として発生しますが、F1を始めとするモータースポーツで用いられるレース用タイヤから発生するタイヤカスは大きな固まりで発生。
コースのレコードライン上にこびりついたタイヤカスは「ラバーがのる」と形容されますが、これはマシンのグリップ向上に役立ちます。「路面がよくなる」のはこのためです。
しかし、路面にこべりつくことなく剥がれ落ちた大粒のタイヤカス(マーブル)は、コース上の障害物となってしまいます。
粒が大きいために、これにマシンが乗ってしまうと急激にグリップを失ってしまうほか、前を走行するマシンがマーブルを拾ってしまうと、後続マシンに飛んでくることも。
ラバーグリップ
レース中熱を持ったタイヤが溶けて路面にくっつくことでグリップ力があがることを言います。
加減速時やコーナリング時につきやすいです。ラバー(ゴム)によるグリップ力のアップなので、ラバーグリップと呼ばれます。
「ラバーがのってくる」などと使用。粗い路面の上にゴムがのることで路面は滑らかにもなり、結果タイヤの消耗も小さくなります。ラップを重ねる毎にタイヤの持ちが良くなったりタイムが向上していくのはこれが一因です。
本日のまとめ
今回は、F1のルールや用語についてお伝えしてきました。実況や解説で耳にするものを特にまとめてみました!とりあえず、これだけ知っておけばかなり楽しく観戦できると思います。
COVID-19の影響により開幕は7月にずれ込みましたが、ぜひそれまでにチェックしてみてはいかがでしょうか。